工作機械にはさまざまな種類があり、その一つに「マシニングセンタ」と呼ばれるATC(自動工具交換装置/じどうこうぐこうかんそうち)を備えた産業用(さんぎょうよう)ロボットがあります。
そんなマシニングセンタを操作する人のことを「機械加工者(マシニング)」といい、製造の現場に欠かせない仕事となっています。
ただ、普段はなかなか耳にする機会がないため、機械加工者(マシニング)について詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、機械加工者(マシニング)にスポットを当てて、仕事内容や特徴について詳しく掘り下げていきたいと思います。
マシニングセンタとは?
機械加工者(マシニング)の説明にいく前に、まずは操作を行うマシニングセンタについて解説していきます。
マシニングセンタとは、自動で切削工具(せっさくこうぐ)の交換機能を備えている工作機械です。日本工作機械工業会(にほんこうさくきかいこうぎょうかい)では、以下のように定められています。
“中ぐり、フライス削り、穴あけ、ねじ立て、リーマ仕上げなど多種類の加工を連続で行えるNC工作機械”
これにより、工具の切り替えから加工まで、人の手を加えずに進めることができるため、安全を守りながら、作業を進めていくことが可能になります。
マシニングセンタには大きく4種類あり、それぞれ特徴があります。
- 横型マシニングセンタ:工具を地面に対して水平方向に取り付けるマシニングセンタ。長時間動かすことが可能で大量生産向き
- 立型マシニングセンタ:加工物を上から加工するマシニングセンタ。多くの種類を少量生産することに向いている
- 門型マシニングセンタ:正面から見た際に門の形をしているマシニングセンタ。主に大型製品の加工に用いられる
- 5軸制御(ごじくせいぎょ)マシニングセンタ:5軸での制御が可能なマシニングセンタ。高度なプログラミング知識が必要だが、スムーズな加工が可能に
機械加工者(マシニング)とは?
機械加工者(マシニング)とは、マシニングセンタを操作する人のことをいいます。
マシニングセンタを動かすためには、加工するものに応じて加工プログラムを計算・作成し、マシニングセンタにデータとして打ち込まなければなりません。
つまり、加工物をどう加工するか、設計図通りにできるかは、機械加工者(マシニング)の手腕にかかっているといってもいいでしょう。
当然、図面を読む力や機械工学系の知識がないといけませんし、加工物によっては熱によって形が変化するものもあるので、あらゆる加工物の性質についての知識も求められます。
機械加工者(マシニング)の仕事内容
機械加工者(マシニング)についてわかったところで、具体的な仕事内容についてもう少し紹介していきます。
01. 段取り
マシニングセンタを動かすには、NCデータと呼ばれるプログラムが必要です。
最終図面から逆算して、穴をあける位置、工具の直径、切削速度(せっさくそくど)・方向など、図面や3Dデータを参考にどのように加工するのか決め、データにしてまとめていきます。
一度加工すると元に戻すことはできないため、もっとも重要で責任ある作業といえるでしょう。
02. データ入力
段取りで作成したデータをマシニングセンタへ入力・転送します。
パソコン上でシミュレーションして図面通りの加工ができるか、形状などを確認し、工具本数が足りない場合は注文します。
03. 加工
データや加工する材料、工具などをセッティングしたら、いよいよ機械を動かして材料を加工していきます。
まず初めに不具合がないかテスト運転を行い、指定した通りに動いているか、確認しながら慎重に進めつつ、加工して製部品・製品の形にしていきます。
マシニングセンタを用いた加工は、材料によって摩擦熱(まさつねつ)で形が変わることもありますし、ミクロンオーダー(1000分の1ミリ単位)の細かな作業となるため、慎重かつ正確に物事を進めていける能力が求められます。
また、加工するものによっては長時間かかるものもありますが、自動加工なので夜間も加工を行うことができますし、人が常にいる必要もありません。
04. 完成品のチェック
一通り加工が終わったら、図面通りの加工ができているかをノギスやマイクロゲージ、ピンゲージといった専用の測定機器(そくていきき)を使ってチェックしていきます。
もし問題があった場合は、マシニングセンタの設定を見直し、修正をしたりと、品質管理のスキルが必要な作業です。
ここまでが一連の流れですが、それだけでなく工具や機械の状態をチェックしたり、メンテナンスを実施するのも機械加工者(マシニング)の仕事になります。
機械加工者(マシニング)に向いている人
機械加工者(マシニング)の仕事内容についてはわかりました。もしかしたらここまでの情報をみて興味を持った方もいらっしゃるかもしれませんね。
ここからは、機械加工者(マシニング)に向いている人の特徴を紹介します。
ものづくりが好きな人
機械加工者(マシニング)に限らず、製造業すべてにいえることですが、ものづくりが好きな人なら、とても向いている仕事といえます。
機械加工者(マシニング)の仕事は、金属の塊を機械で操作して加工し、製品や製品部品を産み出していく仕事です。
ものづくりが好きな人であれば、材料から徐々に製品へと変化していく流れを楽しむことができますし、情熱を注ぐことができるでしょう。
自動車業界をはじめ、日本のものづくりは世界でもトップクラスですから、その仕事をしていることに誇りを持って取り組めるはずです。
機械・ロボットが好きな人
ものづくりだけでなく、機械やロボットが好きな人にとっても、機械加工者(マシニング)は向いている仕事といえます。
機械加工者(マシニング)は機械を操作する仕事なので、自分が入力したプログラムや数値によって機械が思い通りに動き、イメージしたものが完成した時、喜びは一際大きいものとなるでしょう。
慎重に作業できる人
仕事内容の項目でも触れたように、1000分の1ミリ単位の精密な作業が求められる機械加工者(マシニング)では、何事も細かく観察し、数値データを正確に入力しなければなりません。
そのため、同じ作業でも何度も確認しながら慎重すぎるくらいで作業を進めていける人は、機械加工者(マシニング)に向いている人材といえるでしょう。
反対に、慎重な作業が退屈に感じる人や大雑把な性格の人は、機械加工者(マシニング)に向いていないといえます。
プラス思考の人
いくら慎重に作業をしていても、思わぬところでミスを犯すことはありますし、機械での作業とはいえヒューマンエラーが起こることもあります。
ケースによっては、製品が完成してから間違いに気づき、一からやり直しになるということもあるでしょう。
失敗しないようにすることはもちろん大切ですが、一度の失敗でもめげない、常にチャレンジができるプラス思考の人は、機械加工者(マシニング)に向いている人材といえます。
機械加工者(マシニング)のこれからについて
これまで、機械加工者(マシニング)は製造現場においてなくてはならない存在でしたが、AIやロボットといったデジタル技術の進化もあり、いずれは必要なくなるのではないかという意見もあります。
今後その可能性もゼロとは言い切れませんが、AIやロボットに指示を出し、機械を動かすのもオペレーターの仕事のひとつですし、すべての業務がなくなるというわけではありません。
マシニングセンタの操作を人の手で行っている町工場や工作機械メーカーもまだまだ多いですし、自動化が進んでいる工場においても需要の増加が期待できる、安定的に求人がある職種といえるでしょう。
また最近の傾向として、コストカットや少子高齢化などの理由から、ベトナム・インドネシアを中心とした外国人技能実習生を採用する企業が増えたり、反対に海外での職務経験が豊富な技術ビザを持つ外国人労働者を紹介するサービスも登場しています。
まとめ
今回は、機械加工者(マシニング)の仕事内容や特徴について解説してきました。
繊細で慎重な作業が求められるものの、未経験者からでも働くことができますし、製造業が続く限り機械加工者(マシニング)も必要になるので、今後も安定していて将来性のある職業といえるでしょう。
この記事を読んで興味を持った方、ものづくりや機械・ロボットが好きな方、ぜひ機械加工者(マシニング)にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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